多様な薬

現在日本人の約20%、5人に1人が高血圧だと言われています。
あなたは日頃の自分の血圧やどれくらいの数値が丁度良いのか知っていますか。
日本高血圧学会が発行している「高血圧治療ガイドライン2009」では、成人における安全な血圧値を次のように分類しています。

至適血圧を収縮期血圧(上の血圧や最高血圧とも呼ばれています)が120mmHg未満で、かつ、拡張期血圧(下の血圧や最低血圧とも呼ばれています)が80mmHg未満としています。
収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満の場合を正常血圧となっています。
この数値までなら、安全な範囲と言えます。

そして収縮期血圧が130~139mmHgまたは、拡張期血圧が85~89mmHgの場合を正常高血圧と呼び、注意が必要となっています。
やや高めと言うことです。
テレビのCMで「血圧が130を超えると高め」と言っている通りです。

そもそも高血圧とは?どこまで下げればいいのか

そして、高血圧と呼ばれているのは、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合です。
治療や対策が必要なレベルです。

さらに、I度高血圧を収縮期血圧が140~159mmHgまたは、拡張期血圧が90~99mmHgとし、II度高血圧を収縮期血圧が160~179mmHgまたは拡張期血圧が100~109mmHg、III度高血圧を収縮期血圧が180mmHg以上または拡張期血圧が110mmHg以上としています。
そして収縮期血圧が140mmHg以上だけど拡張期血圧が90mmHg未満の場合を、孤立型高血圧や収縮期高血圧と分類しています。

収縮期血圧はI度だけど、拡張期血圧はII度だと言う場合は、高い方に入れてII度に分類してください。
年齢などの個人差がありますが、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の状態が続く場合は、高血圧として治療が必要になってきます。

1999年のWHO/ISHの分類では、140~149/90~94mmHgを境界型高血圧としてました。
しかしこれは実用性に欠けるために、JSH2000以降は削除されています。
また、2004年以前のガイドラインでは高血圧のレベル分類を軽症、中等度、重症としていましたが、軽症と言う表現では軽視してしまいがちです。
軽度の高血圧でも高リスクの場合もあるので、現在はI度、II度、III度という表現に変えられました。

高齢者の血圧は、収縮期血圧が高く、拡張期血圧が低くなって上下の差が大きくなると言う特徴があります。
また、高齢者は日内変動が大きいという特徴もあります。
では、高血圧の場合、どこまで血圧を下げればよいのでしょうか。

若年者や中年の人の場合は、130/85mmHg未満とされています。
高齢者は140/90mmHg未満に、となっています。

これらの数値は診察室で測った場合の血圧値です。
家庭で測定した場合はこれよりも5mmHg低い値を目指す、という指針になっています。
診察室では「また高かったらいやだなあ」などと、色々なことを考えてしまって、緊張した状態での測定になってしまい、家庭で測るよりも高くなりやすい傾向があります。

また、たったの1回測定しただけで高血圧だと決めつけるのは良くありません。
血圧は日々変動しているし、1日の間でも変動します。
健康診断の際は、先述したように「高かったら嫌だな」などと緊張状態での測定のこともあります。
また中には看護師さんや医師が好みのタイプで血圧が上がったというケースもあります。

血圧が高いからと言って、すぐに血圧を下げるお薬が必要になると言う訳ではありません。
高血圧以外の病気はないかなどをチェックし、生活習慣の修正を行います。
合併症がある場合やIII度の高血圧の状態が続いている高リスク群の場合は、直ちに降圧薬を使いますが、合併症のない低リスク群の場合は3カ月たっても血圧が140/90mmHg以上の場合に、降圧薬を考えます。
まずは生活習慣の修正です。
野菜中心の食事をしているかどうか、運動不足になっていないかどうかなどを見直してみましょう。

普段の食事で血圧を下げる方法

生活習慣の修正で大きなウエイトを占めるのが食生活です。
塩分を控えると言うのは、既に知っていることでしょう。
日本人の食事は、漬物や佃煮、魚の干物、かまぼこやちくわなどの練り物など、塩分の多いものがたくさん溢れています。
まずはこれらを極力控えるようにしましょう。

毎食漬物に醤油をかけて食べていた人は1日1回にする、漬物に醤油をかけないなど、できることから始めてください。
何にでも醤油をかけてしまう、と言う人はスプレー醤油をお勧めします。
表面にかかっているだけでも味は感じるので、ほんの少しの醤油で満足できるでしょう。

また麺類の汁を全部飲み干すと5~6gもの塩分になってしまいます。
高血圧の場合は1日の塩分を6g以下にするのが理想的です。
麺類の汁は味見程度にして残すようにしましょう。

塩分を減らすとナトリウムの摂取が減るので血圧が下がります。
同時に野菜中心の食事にして野菜に多いカリウムをしっかり取りましょう。
カリウムにはナトリウムが尿と共に排泄するのを促す作用があります。

野菜は1日350g以上摂りたいものです。
両手の平に山盛り1杯のるくらいの量で350gです。
1食で130g摂ることになります。
付け合わせの線キャベツでは50g程度しか摂れませんが、野菜料理を1皿食べると80~100gくらいは摂れます。
野菜中心の献立にして毎食1皿は野菜料理を食べましょう。

ついついおやつに菓子類を食べてしまうと言う人は、間食には果物を食べるようにしましょう。
果物にはカリウムがたくさん含まれています。
果物の中でも、カリウムの多いアボカドやビタミンCの多い柑橘類やキウイ、カロテンの多い柿がベターです。
量が多くなりすぎないように、アボカドなら1日に2分の1個程度、ミカンなら3個まで、柿なら1個までにしておきましょう。

カリウムを摂るためには果物は大切ですが、果物は野菜の代わりにはなりません。
果物の中には糖分が多い物もあります。
また、緑黄色野菜と比べるとカロテンはほとんど摂れません。
野菜の代わりに果物ではなく、お菓子の代わりに果物にしてください。

丈夫な血管を作ることは血圧を下げることに繋がります。
肉や魚や大豆製品や卵もバランスよく食べてタンパク質もしっかりと摂るようにしましょう。
その中でも鶏のむね肉は、脂肪が少なく良質のタンパク質なのでおすすめです。
価格も安くて賢い主婦の味方とも言える鶏のむね肉を積極的に献立に取り入れてください。
鶏のむね肉にはオレイン酸が多く含まれていて、オレイン酸には血圧を下げる作用があることも判っています。

酒の風味で減塩できるので梅酒で蒸した鶏肉の梅酒煮や、鶏肉を茹ででレモンやスダチなどの柑橘類の酸味で食べたり、茹でたり蒸したりした鶏肉にネギやショウガの風味を生かしたつけダレで食べるのも減塩になります。
鶏肉と一緒に野菜もたっぷりと蒸したり茹でたりして野菜中心の献立にしてください。
野菜の甘酢あんをかけるなどのメニューも、たっぷりと野菜中心に食べることができて、酢を使うことで減塩にもなります。

体重が多すぎる人は、体重を減らすと血圧も下がることが実証されています。
体重を1㎏減らすと、血圧は1.5mmHgほど下げることができると言われています。
間食が多い人は少しずつ減らしていく、寝る2時間くらい前からは食べないようにするなどが大切です。

有酸素運動で血圧を下げる運動療法

運動も血圧を下げるためには重要なポイントです。
運動で血流が増えると、血液が血管の中をこすります。
その時にその刺激で血管の内皮からは一酸化窒素が出てきます。
この一酸化窒素が血管壁の筋肉を緩めて血管を広げて血圧を下げてくれます。

一酸化窒素を多く出すためには有酸素運動がベターです。
ウォーキングや水泳、サイクリングがおすすめの運動だと考えられています。
心拍数を1分間に100~120くらいにあげる運動が良いことが判っています。
少し早足で歩いたり、自転車を早めに漕ぐとこれくらいの心拍数になります。

勝ち負けが生じるテニスなどのスポーツや競うようなスポーツの場合、ムキになって興奮してしまう人もいるので、かえって血圧を上げることも多々あります。
高血圧の人の中には勝ち負けにこだわってムキになりやすい人や負けん気が強い人も多いので、自分のペースでできるウォーキングやサイクリングがベターです。
また、サイクリングやウォーキングは必要経費も少なく、手軽にできます。

サイクリングやウォーキングとまではいかなくても、バス通勤を自転車に変える、一駅手間で電車を降りて少し早足で歩くなどでも、充分に効果は期待できます。
毎日の生活の中で、続けられる方法を工夫して考えてください。

また一気に30分の運動を行おうとしなくても、1日トータルで30分でOKです。
通勤の際に駅まで8分だという人は、少し早足で歩けば、往復で15分です。
後の15分はお昼休みに歩く、職場内の移動は階段を使うなどでも良いでしょう。

運動を行う際はウオーミングアップを充分に行ってください。
また、真冬の寒い早朝に外にでてランニングをするのはリスクも伴うので、暖かい午後に運動するなどの工夫も大切です。
無理のない範囲で行ってください。

寒くて気分が乗らない日は、テレビを見ながらテレビの前で駆け足をするだけでも、良い有酸素運動になります。
買い物に行ったついでに、暖房の効いているショッピングモールの中を、何周かウォーキングするのも良いでしょう。
ショッピングモールでウォーキングをする際は、余計な物を買わないようにそして有酸素運動となるように、やや早足でウォーキングすることが重要ポイントです。

また、寝る前に運動をすると、交感神経が活発化して眠れなくなることがあります。
寝る前は交感神経の活動が低下して副交感神経が活発化することで、体が眠る準備を整えます。
寝る前に運動をするのはお勧めできません。
昼食後に1時間ほど休憩して、その後ブラブラとやや早足で30分ほど散歩すると血圧が下がりやすいでしょう。

適度な運動はストレスの解消にもなるし、肥満の予防や解消にもなります。
毎日有酸素運動を行うと、血圧が5~20mmHg下がることが判っています。
ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動は1日30分以上行うのが理想的です。
週3回以上できれば毎日、これらの有酸素運動を行えると効果的です。

食事療法・運動療法は医師に相談しよう

食事療法を行う際は、一人一人が日ごろの食事のくせみたいなものがあります。
自分ではそれほど間食が多いとは思っていなくても、専門家がみればびっくりするくらい多いというケースも多々あります。
「おやつはみんな毎日食べているんじゃないの」と思っていて、毎日たい焼きやケーキ、スナック菓子を食べていた人や、カップラーメンをほとんど毎食のように夜食で食べていた人もいます。

自分では「これくらい、当たり前」、「これくらいは誰でもやっていること」と思っている場合もあります。
中には体に良いと思ってせっせと食べていたものが塩分の多い物だったというケースもあります。
食事記録を書いて栄養士に見てもらって、改善方法をアドバイスしてもらう方が早く血圧が下がります。

血圧が高くなっている原因が漬物や干物の人もあれば、寝る前の間食の人、ハムや練り物が多い人など、一人一人違います。
栄養士が行う個人指導による栄養指導は、一人一人の食事内容を見て、一人一人に合わせた改善策を考えてくれます。
ぜひとも、栄養士から食事指導を受けてください。

また、自己判断で健康食品や漢方薬やサプリメントなどを使うのは良くありません。
中には体に良いと思って飲んでいた漢方薬やサプリメントが血圧が上がる原因だった例もあります。
素人にはそのあたりのことは判らないので、これらのことも必ず医師に相談してください。

食事療法の効果が出ているのかどうか、時々診察を受けて血圧を測ってもらったり検査を受けることも大切です。
血圧が下がっているのを実感すると、食事療法や運動療法もやる気が出ます。
やる気が出てきちんと食事療法や運動療法が実施出来れば、血圧は必ず下がります。
こうして良いサイクルに持っていくことが重要です。

食事療法や運動療法がうまく行かない時や挫折しそうな時も、気軽に栄養士や医師に声をかけてください。
ちょっと愚痴をこぼすだけでも、「また頑張ってみようかな」という気持ちになってくるでしょう。
時には、ちょっとしたアイディアなどを教えてもらえることもあるでしょう。

間食が止められないなどと言うと叱られる、と思っている人もいるようですが、医師や栄養士と共に、なぜ止められないのかを探っていったり代替え策を考えることが大切です。
医師や栄養士は患者さんの力になりたいといつも思っていますので、行き詰った時は相談してください。

運動の仕方も医師に相談してください。
どの程度の運動をやれば良いのかなどは、状態によって一人一人違います。
あなたの性格をよく判っている主治医なら、頑張り屋さんで無理をするタイプだからこの程度にしておく方が良いだろうなどの微調整もできるでしょう。

時には、理学療法士やトレーナーが運動メニューを考えてくれることもあります。
クリニックや病院のエアロバイクを利用したり、ウォーキングエリアを設けている医療機関もあるので、利用させてもらうのも賢い方法です。
医師やメディカルスタッフの指導の下、血圧が下がるように食事療法や運動療法を行いましょう。